2025年「目の健康講座」

10月10日の「目の愛護デー」にちなんだ「目の健康講座」(徳島県医師会など主催、徳島新聞社など共催)が9月21日、徳島市のふれあい健康館で行われました。川原眼科の川原弘医師は飛蚊症について、徳島市民病院眼科の西野真紀医師は子どもの近視や弱視について解説しました。徳島アイバンク理事で、すがい眼科の菅井哲也医師は角膜移植の現状と課題について説明しました。目の健康相談担当医は猪本康代医師・川原弘医師・西田雅弘医師・三河貴史医師でした。

講演要旨は次の通りです。

「飛蚊症について」

川原 弘医師 (川原眼科)

 飛蚊症とは、明るい所や白いもの、空を見たときに目の前に糸くずやアメーバのような浮遊物が見える症状だ。光は角膜、前房、水晶体、硝子体を通って網膜に映る。本来、透明なはずの硝子体に濁りが出て、網膜にその影が映るのが飛蚊症の原因である。

 硝子体の濁りの原因は、ほとんどが加齢である。あと病的な要因として一番大事なのが、網膜裂孔、網膜剥離である。硝子体出血、ぶどう膜炎が原因になる場合もある。

 加齢による硝子体の変化だが、加齢とともにゼリー状の硝子体繊維の組成が変化し、硝子体の中に液体のたまった小部屋ができる。この小部屋が大きくなり、硝子体そのものが収縮していくことで自然と濁りができる。飛蚊症の多くは、このように加齢によって自然にできるものである。

 さらに進行していくと硝子体と網膜の接着が剥がれることがあり、これを後部硝子体剥離という。後部硝子体剥離が起こると網膜裂孔・網膜剥離の可能性が出てくる。

 飛蚊症の多くは加齢などによる生理的なもので治療を要しないが、飛蚊症が急激に悪化した場合は要注意である。網膜裂孔や網膜剥離が原因なら、早急に治療が必要である。飛蚊症が気になるようになったら、早めに眼科を受診して眼底検査を受けてほしい。

子どもの目を守ろう

~近視の進行予防と弱視の早期発見~

西野 真紀医師 (徳島市民病院 眼科)

  子どもの近視は放置すれば自然に進行し、残念ながら自然に回復することはほとんどない。早い段階から対策することで、近視の進行を予防できることが分かってきた。そのため、保護者や教育者が積極的に関与し、適切な指導と支援を行うことが大切だ。

 近視が進行すると緑内障や網膜剥離など他の目の病気につながることがある。進行予防として▽1日2時間の外遊び▽近くのものを見るときには部屋を明るくし、30分ごとに20秒以上、目を休める▽30センチ以上離して見るなどが有効だ。最近は近視進行を遅らせる点眼薬が登場し、近いうちに特殊な眼鏡やコンタクトレンズといった治療法も実用化される見通しである。

 一方、弱視は視力の発達が障害されて生じる低視力のことで、50人に1人の割合でみられる。生まれた時には未熟な視力だが、「くっきりしたものを見る」ことで脳が刺激を受けて発達する。視覚発達にはタイムリミットがあり、この期間を過ぎて治療しても効果は得られず、生涯にわたり弱視となるので、小学校入学までに治療を完了することが大切だ。

 弱視の子どもは自覚も乏しく、周囲の大人も気付かないことが多い。そのため3歳児健診で発見し、早期に治療を開始することが重要になる。

 2023年にこども家庭庁創設され、6月10日が「こどもの目の日」に制定された。「6歳までに視力1.0に」という願いが込められ、子どもの目の健康を社会全体で守る意識が高まりつつある。

「角膜移植の現状と課題」

菅井 哲也医師(すがい眼科 ・ 徳島アイバンク理事)

  全ての臓器移植に関して意思を表示する臓器提供意思表示カードがある。臓器移植を受けてもいいと記入していただくと非常に助かる。ただカードに書かれていなくても、眼球提供が可能なケースがある。「生前に本人、遺族が眼球提供に同意している」「本人の意思が不明でも遺族が眼球提供に同意した」という場合は可能になる。アイバンク登録がなく、臓器提供意思表示カードを持っていなくても眼球提供が可能となる。

  献眼登録者や角膜提供者の減少が続き、それによって移植用角膜が不足しているのが課題だ。米国からの角膜輸入に頼らざるを得ない現実があり、日本の中で献眼された数より輸入された角膜で手術を受けている方が多い。

 日本人からの角膜移植を増やさないといけないが、日本での献眼は少ない。その理由に▽宗教や死生観▽臓器提供の意思確認の難しさなどがある。角膜移植を詳しく知ることで、自分が死んだ後に誰かの役に立ちたいとか、最後のボランティアとして、と肯定的な考えに変わる人もいる。ぜひ角膜移植のことを知って、アイバンクに登録してほしい。

 

目の健康相談会では、約20人の方が直接眼科医に相談されました。

当日出務していただいた先生方はもとより徳島新聞社のスタッフの皆様の多大なご協力により成功裏に終了いたしました。皆様、ありがとうございました。今後も徳島県眼科医会会員の皆様にはご協力よろしくお願い申し上げます。また徳島県民の皆様、また来年もご参加ください。