2024年「目の健康講座」

10月10日の「目の愛護デー」にちなんだ「目の健康講座」(徳島県眼科医会など主催、徳島新聞社など共催)が9月29日、徳島市のふれあい健康館で行われました。約150名方が参加されました。藤田眼科の埜村裕也医師は白内障と網膜疾患、こくふ眼科の山添健二医師は近視と眼疾患について治療法などを解説しました。徳島アイバンク理事で県臓器移植コーディネーターの大倉和代さんは角膜移植の現状などを説明しました。講演要旨は次の通りです。

「白内障と網膜疾患」

埜村裕也医師 (藤田眼科)

目の一番前にあるのが角膜で、次に水晶体。角膜と水晶体で光が屈折して網膜に焦点が合うことで、ものがきちんと見える。白内障はこの水晶体が濁ってぼんやり見えてしまう病気だ。原因としてはほとんどが加齢だが糖尿病やアトピー、強い目の外傷でも起こる。進行するとピントが合わなくなったり、かすんだり、ダブってものが見えたりとさまざまな症状が現れる。

 根本的な治療は眼内レンズを入れる白内障手術になる。最近は超音波の手術機器や眼内レンズの飛躍的な進化で手術時間も短縮され、安全な日帰り手術が可能になり、早期の社会復帰が可能である。

 眼内レンズは眼鏡のように希望の距離にピントを合わせることができる。ライフスタイルに合わせて医師としっかり話し合い、レンズの度数を選択することが大事になってくる。

 日本の視覚障害の原因で1位は緑内障。次いで糖尿病網膜症。最近増えているのが加齢黄斑変性症だ。糖尿病網膜症は60代、加齢黄斑変性症は80代が多い。

 糖尿病網膜症は糖尿病三大合併症の一つで、血糖が悪い状態が続くと数年から数十年で発症する。網膜の血管がもろくなって出血を起こしたり、浮腫を起こして視力が低下する。血糖が改善しなければ最終的には難治の緑内障になって失明することになる。

 VEGF阻害薬やレーザー治療によって外来で簡単に治療可能だが、医療費は高額になることがある。また、進行すれば硝子体手術が必要になることもある。早い段階で血糖コントロールがきちんとできれば視力低下を抑えることができる。

 加齢黄斑変性症は網膜の黄斑部に老廃物が蓄積したり、新生血管などができたりして網膜が害される病気で、原因は加齢、紫外線、喫煙。また食生活の欧米化などで近年増加傾向にある。発症すると中心部が見えないなどの症状が現れる。網膜神経細胞は再生できないため、早期発見、治療が非常に重要になってくる。

 治療は糖尿病網膜症で述べたVEGF阻害薬の注射や光線力学療法と呼ばれるレーザー治療になる。早期に治療が開始できれば重篤な視力低下を予防することができる。ただし多くの方は定期的に注射をする必要がある。

 加齢による目の機能低下のことをアイフレイルという。パソコンなどで検索すると目のセルフチェックが簡単にできるので一度試してほしい。見えにくさがあれば早めに眼科を受診し、白内障や網膜などの病気がないか、眼科での検診を勧めたい。

「近視と眼疾患」

山添健二医師 (こくふ眼科)

近視が大変増えている。日本やアジア、アフリカ、世界各国でパンデミックと言っていいほどの状況で、2050年には世界の人口の半数ぐらいが近視、1割が強度近視になると言われている。

 近視の原因は主に遺伝的要因と環境要因の二つ。最近の増え方は遺伝的要因では説明できない。環境要因としては長時間の読書やスマホと思う。スマホが普及してきた11年あたりからかなり増えてきている。近い距離を見ていると眼球が前後に伸びて近視になってくる。

 近視になると目のさまざまな合併症が増えてくる。白内障の場合は近視とほぼ正比例。若年者でも近視があると白内障のリスクになる。近視性黄斑症も強度近視になると急激に増える。

 緑内障は強度近視になると14倍。中途失明の原因は緑内障が一番多く、4人に1人ぐらいが緑内障で目が見えにくくなっている。その人によって目の奥の視神経の強度が違うので、その人にとって眼圧が高いと神経線維や神経節細胞が害される。それが緑内障だ。

 近視が強くなればなるほど緑内障になりやすい。けれど発見は難しい。OCTがかなり有用だ。網膜の黄班部の断層を撮る機械で、光を使ったCTみたいなもの。従来の眼底写真や検査と比べて、かなり早い段階から緑内障の早期診断に使える。

 緑内障の若年での早期発見はとても大事だ。学校検診やコンタクトの検診は緑内障の早期発見の大切なチャンスになる。近視のある人は1年か2年に1回ぐらいはできれば眼科受診してもらった方がいいと思う。

 近視が何歳ぐらいから増えるかというと、21年の文部科学省のデータを見ると、もう6歳から12、13歳までで非常に増えている。小学校の間に1・0未満の人が6割ぐらいになっている。そして1年生から3年生ぐらいの間にかなり進行する。

 学童期には、既に近視があってもなくても、1日に2時間は外で過ごしてもらうことが、かなり近視の抑制には有効と言われている。別に日陰でも構わない。また、昔から言われることだが、30センチよりもっと近くをずっと見続けると近視は進んでいく。

 やはりスマホばかりしていると、どんどん近視は進んでいく。みんなスマホはできるだけ控えてもらえればと思う。  近視は目の老化を早めてしまう。

「徳島アイバンク活動報告」

大倉和代理事 (徳島赤十字病院・県臓器移植コーディネーター)

移植医療は、誰かのためにという他者を思いやる気持ちで提供してくれる人がいなければ成り立たない。何の謝礼もなく、誰かを救うためにという善意のみで提供してくれている。

 角膜は生きている人から提供してもらうことができないため、亡くなった人から眼球を提供してもらい、必要な人に移植する。移植によって視力を回復させることができる。全国では年間約500人が眼球を提供し、約800眼の角膜が移植されている。県内では、数年に1人程度の提供数にとどまり、非常に少ない。

 何を大切にして生きてきたかという価値観や移植医療に対する思いは人それぞれ。提供したい意思や、提供したくないと考える理由もさまざまだ。提供に関する意思は、周りから説得や誘導されることなく、正しい知識を理解した上で、各自が自由に考えることができる。その上で提供したい、したくない、どちらを選択してもその意思は尊重されなければならない。

 亡くなる直前では、自分の意思を伝えることが難しく、元気なときに考えておくこと、家族間で話をしておくことが重要だ。自分や家族の意思が大切に扱われるために、家族の気持ちを知っておく、自分の気持ちを伝えておくということが必要である。

 アイバンクに眼球提供の登録をしていても、その人が亡くなったときに自動的にアイバンクに知らせてくれるわけではない。意思があっても、家族が知らないことや、気が動転し忘れていることもある。

 徳島アイバンクには登録者が約2600人いる。既に亡くなった人や、その後提供しない気持ちに変わった人もいるだろうが、数年に1人の眼球提供数という実態からは、せっかくの意思が生かしきれていないのではないかと感じている。

 提供したいと思っている気持ち、あなたの意思をいつか誰かにつなげるために、家族間で思いを共有することをお願いしたい。