目の健康講座行事

2022年 目の健康講座

10月10日の「目の愛護デー」にちなんだ「目の健康講座」(徳島県眼科医会など主催、徳島新聞社など共催)が9月25日、徳島市のふれあい健康館で行われました。コロナウイルス感染予防のため、参加者は例年の半数である約100名に制限されました。県眼科医会の松本治恵理事は緑内障、竹林優理事は加齢黄斑変性の症状や治療法を解説し、受診と治療継続の大切さを訴えました。徳島アイバンクの樋端透史理事は角膜移植について説明しました。講演要旨は次の通りです。

 

「早期発見・早期治療で怖くない緑内障」   松本治恵(徳島県眼科医会理事)

目の健康講座・松本理事緑内障は、視神経が痩せて視野が狭くなる病気。視野変化の多くは鼻側から徐々に狭くなってくる。普段、両目で生活していると、片目の鼻側が多少見にくくなっても気づかない。最後まで中心の視力は保たれるので、視力検査では異常を発見しにくい。濁った水晶体を手術で交換できる白内障に対し、緑内障は神経の病気なので手術で交換はできない。神経が痩せるのを遅らせる治療になる。原因の一つは眼圧の上昇といわれる。目の中には、酸素や栄養素を配って老廃物を回収する水が流れている。水の入ってくる量と出て行く量が同じなら、眼圧はちょうどいい状態に保たれる。ところが「隅角」という排水口から水がうまく出ていかないと、目の中の水が増えて眼圧が上がり、目の張りが強くなって視神経が圧迫され、神経が痩せる。緑内障には「開放隅角」へいそくと「閉塞隅角」がある。開放隅角は、排水口の目詰まり。網目が詰まってだんだんと排水が悪くなる。一方の閉塞隅角は、白内障が進むことで水晶体が分厚くなり、排水口にふたをした状態。急に眼圧が上がり、頭痛や吐き気が起きるので、患者は救急外来や脳外科外来をさまよってしまうことが多い。また、眼圧が正常でも神経が弱って視野が狭くなる「正常眼圧緑内障」もある。緑内障かどうかは神経の強さで決まるので、眼圧が高くないからといって油断は禁物。視神経の検査が重要になる。検査は楽。目にちょっと風を当てたり、顕微鏡で見たり、写真を撮ったりするだけ。全く痛くない。治療は、眼圧を下げる目薬や飲み薬、手術がある。今は目薬が多種多様になり、一人一人の進行具合に応じて最適な目薬の種類や数を選択できるようになった。排水口の目詰まりを吹き飛ばすレーザー治療や手術も以前より低侵襲、つまり目に優しく効果的に行われるようになっている。視野が狭くなっていないかを知るには、時々、片目ずつ隠して見え方を確かめること。見るものと距離を一定に保って確認する。緑内障は、早期発見と治療の継続が大切。現状の視野をこれからも維持するため、眼科で検診を受けよう。

 

 

「加齢黄斑変性の症状や治療について」   竹林優(徳島県眼科医会理事)

 

目の健康講座・竹林理事

 加齢黄斑変性は、緑内障、網膜色素変性症、糖尿病網膜症に次いで、目が見えにくくなる病気の第4位である黄。斑は網膜の中心部にあり、物の詳細を見分けたり文字を読んだりするのに大切な部分。ここが傷むと視野の中心に見えないところができたり、ゆがみが生じたりする。発症率は年齢とともに高くなる。原因としては喫煙、紫外線、抗酸化物質の摂取不足などが挙げられる。自分でできる手軽な検査は、新聞などを30㌢ほど離れたところから片目ずつ、一点を見つめて中心が欠けていないか、周りの文字がゆがんでいないかをチェックする。おかしいと思ったら眼科を受診してほしい。加齢黄斑変性には、悪化するのが遅い「萎縮型」と、悪化の早い「滲出型」がある。萎縮型は、加齢に伴って黄斑の組織が弱くなる。これといった治療法は無いが、目を有害な光から保護するルテインやゼアキサンチンを含むサプリメントを摂取するといい。眼科や薬局で手に入る。ブロッコリー、レタス、ホウレンソウなどの緑黄色野菜もルテインが多いので積極的な摂取を勧める。一方の滲出型は、網膜の下から新生血管という異常な血管が伸び、出血したり、血管から成分が漏れ出したりして黄斑を傷める。治療としては、新生血管をつくる原因であるVEGFという物質の働きを抑える薬を目に注射する。注射は基本的に月1回、3回から4回注射を行う。改善の度合いによって2カ月に1回、4カ月に1回と延ばすこともある。数年にわたって何十回と注射している人もいる。治るかどうかは残念ながら人によるが、完全に元に戻すのは難しく、早期発見早期治療の方が回復はいい傾向にある。見えにくいのに放置し、かなり悪くなった状態で眼科に来ると、注射をしてもなかなか効果が出ないことがある。また、あまり変わらなくても、注射をやめると悪化する可能性がある。治療の継続が肉体的、精神的、経済的に負担である場合は相談してほしい。発症しないような予防や、発症しても諦めずに治療をすることが、生活の改善につながる。

 

「角膜移植について」   樋端透史(徳島大学眼科・徳島アイバンク理事)

 

目の健康講座・樋端氏

よく見えるためには、角膜のゆがみが少なく、透明な状態であることが大事だ。角膜のトラブルとしては細菌等の病原体による感染症、体の免疫反応等が

強く出過ぎて傷ができる、生まれつき濁りや細胞の弱さがあり年とともにだんだん悪くなる、石や金属の破片が飛んできて目にけがをする―などが挙げられる。治療をしても角膜に濁りが残り、見えにくい状態になることがある。その場合、角膜移植をすることが多い。濁った角膜を、きれいな角膜に置き換える手術を行う。移植する角膜は全て、亡くなった人からの提供。角膜移植は、亡くなった人や遺族の献眼(眼球提供)によって成り立っている医療だ。アイバンクは、献眼に関するサポートを行っている団体。移植を待っている人と、提供したい人との懸け橋になっている。重要なのが、提供の意思確認だ。日本では、意思確認の仕方がまだ成熟していない。米国では、臓器提供がもっと一般に浸透している。脳死判定から臓器の摘出、提供までの流れが体系化している。日本での角膜移植は、国内の提供だけで足りず、米国から角膜を輸入して手術せざるを得ないのが現状だ。献眼は、生前に本人が希望しており、遺族が同意した場合はできる。また本人の意思がはっきりしなくても、遺族が希望した場合は提供できる。一方、本人が提供したくないことを書面などで明記していたり、本人は希望していても遺族が反対したりすると、できない。提供の意思がある人は、アイバンクに連絡して登録しておくと献眼が実現しやすい。人によって考え方はさまざま。提供したい人、したくない人、どちらでもない人。機会があれば家族で話をしてみてほしい。分からないことがあれば、徳島アイバンクに問い合わせてほしい。

     

       公財)徳島アイバンク 電話 088-633-7163

       〒770-8503 徳島市蔵本町3-18-15 徳島大学医学部眼科分野内