2015年「目の健康講座」

平成27年度の「目の健康講座2015」が9月27日(日)午後1時~4時30分
徳島市沖浜東の「ふれあい健康館ホール」で行われました。

1 講演会

  • 「最近の白内障手術」 徳島県眼科医会会長 盛 隆興先生
  • 「眼瞼と涙道疾患」 徳島県眼科医会理事 下江 千恵美先生

2 アイバンク紹介

「角膜移植:申し込みから手術までの流れ」 徳島大学眼科 宮本 龍郎先生

3 目の健康相談会(当日先着30名様)

  • 下江 千恵美先生 藤田眼科
  • 秦 裕子先生 秦眼科
  • 盛 隆興先生 盛眼科
  • 吉村 久先生 城北眼科

主催:徳島県眼科医会、日本眼科医会
共催:徳島大学眼科、徳島アイバンク、徳島県医師会、徳島市医師会、ふれあい健康館、徳島新聞社

今年は天候に恵まれ200人の参加者がありました。
盛先生には最近の白内障手術について講演していただきました。まず目の解剖について解説していただきました。白内障は目の中の水晶体が濁る病気で、症状には目がかすむ、まぶしい、などがあり発病率は50歳代で40%、80歳代になれば99%が発病するとのことでした。治療には目薬と手術があるが、目薬は進行予防が目的であり、根本的な治療は手術しかないとのことでした。最近の白内障手術は日帰り手術が主体になってきていて、手術時間も短時間で済むようになっており、日常生活に不自由を感じた時に受ければよいとのことでした。手術は濁った水晶体を取り除き、眼内レンズを挿入しますが、従来からある「単焦点眼内レンズ」最近の「多焦点眼内レンズ」「乱視矯正眼内レンズ」についても解説していただきました。白内障が進むと、手術が上手くいかないことがあるので、手術時期を逃さないためにも定期的な目の検診が大切だと訴えました。

 次に下江先生には、眼瞼と涙道疾患について講演していただきました。まず流涙症については、視力の障害や充血、痛みなどに次いで多い訴えのひとつであり、まぶたの異常や涙道の閉塞が原因となっていることが多いとのことでした。まぶたの異常によるものには睫毛内反、眼瞼内反、眼瞼けいれん、涙道閉塞によるものには先天性、抗がん剤の副作用、一番多いのは原因不明で高齢者に多いとのことでした。治療については先天性鼻涙管閉塞に対しては鼻涙管ブジー法が行われ、成人には涙道内視鏡下涙管チューブ挿入術が最近では行われるようになったとのことでした。局所麻酔で通院治療が可能であり、発症から早い時期であればかなり改善が見込めることを、手術のビデオを供覧し解説していただきました。また難治症例には涙嚢鼻腔吻合術が行われるが、入院して全身麻酔が必要と解説しました。流涙症は目の不快感や視機能異常を伴うので、異常を感じたら眼科受診をすることの大切さを訴えました。

次に宮本先生にはアイバンクの紹介として、角膜移植の申し込みから手術までの流れについて講演していただきました。角膜移植は角膜提供者の善意が必要であり、献眼の意思表示の方法として、アイバンクへの入会と臓器提供意思表示カード(ドナーカード)への記入があること、このどちらでもない場合でも可能であり、それは生前に本人や家族が眼球提供に同意し、かつ死後家族が同意した場合であるとのことでした。最近の眼球摘出は、摘出時間も短く、摘出後も外見上の変化は少なくなっているとのことでした。アイバンク未加入、ドナーカード未記載でも献眼は可能であることを知っておいてほしいと訴えました。

目の健康相談会には30人が相談をされました。当日出務していただいた先生方はもとより、徳島新聞社のスタッフの皆様の多大な御協力のもと盛大に終了いたしました。皆様どうもありがとうございました。徳島県民の皆様、来年もぜひご参加ください。

講演会

最近の白内障手術

徳島県眼科医会会長 盛 隆興 先生

白内障は加齢変化の一つで、80歳に到達するとほぼ100%の人が罹患する。
白内障の治療には点眼薬や内服薬もあるが、それらは白内障進行を抑制するのみで現在の所、根本治療は手術療法しかない。

 白内障手術は近年、手術装置の検査機器の改良や挿入眼内レンズの進歩はめざましく、非常に安全な手術の一つとなった。

 以前は、視力が著しく低下してから手術することが多かったが、最近は白内障患者自身が生活に不自由を感じるようになれば手術を検討する時代となった。具体的には、車の運転に支障があったり運転免許証の更新が出来ない、家事や趣味が見えにくいために十分に出来ない場合など。しかし目に白内障以外の他の疾患を合併している場合や、著しく進行した白内障では手術をしても視力が回復しないこともある。白内障の進行具合は患者自身ではわかりにくいため眼科医の定期検査を受け、手術に適した時期を逃さないようにすることが重要である。

 白内障手術手技も年々洗練され、多くの場合、短時間かつ日帰りで施行可能である。

手術で挿入する眼内レンズは、折りたたみ可能なレンズが主流で、目の切開創も1.9~3.0mmで手術が出来る。挿入する眼内レンズも多焦点レンズや乱視矯正レンズも使用できるようになり、手術前に医師と相談して患者に適した眼内レンズを選べるようになった。将来は手術方法や挿入される眼内レンズが更に進歩し、白内障手術後視力の質の向上が期待される。

眼瞼と涙器疾患

徳島県眼科医会理事 下江 千恵美 先生

初診患者だけで無く、眼内の手術を終えられた方などにも涙の不快感・流涙を訴える方は意外に多い。そして「流涙症」は、結膜炎や角膜炎などの眼表面の病気以外に、まぶたの異常や涙道の閉塞が原因となっていることがある。

 涙は上まぶたの外側にある分泌腺『涙腺』で分泌され、目を潤した後、目頭にある涙点から、直径1mmほどの涙小管を通り涙嚢、鼻涙管を通って鼻腔に流れ出ていく。これを「涙道」という。また、まぶたは涙を涙道の中に送るために重要な役割を担っており、まばたきをすると涙小管内が陰圧になり、目に溜まっている涙が吸引され涙道に入っていく。これをまぶたのポンプ機能という。

流涙症の原因となるまぶたの病気には、逆まつげ(睫毛内反や眼瞼内反)、兎眼、眼瞼下垂、けいれんなどがある。逆まつげはまつげの刺激で角膜障害を起こし流涙症となる。睫毛内反は子どもによく見られ、成長とともに治まることもあるが、長引く場合は手術を行う。まぶたの筋肉が緩み、内側に巻き込まれてしまう眼瞼内反は高齢者に多くみられる。これも緩んだ筋肉を引っ張り固定する手術が必要となる。手術時間は局所麻酔で20分程度。

その他顔面神経麻痺でおこる兎眼やまぶたのけいれん症でも、涙を流すポンプ機能がうまく働かず流涙症を引き起こす。眼瞼けいれんや片側顔面けいれんにはボトックス注射などの対処療法を行う。

涙道の閉塞で流涙症となる場合、原因としては先天性、抗がん剤の副作用、涙が石のようになって涙道が詰まる涙石などがあるが、一番多いのは原因不明であり高齢者に多い。閉塞した涙道に細菌が入って感染してしまうと、膿が涙嚢に貯まる涙嚢炎となり、時に強い痛みを伴う。

涙道閉塞の治療には、鼻涙管ブジー法という柔らかい金属の棒を涙道の中に入れて詰まりを突く方法があるが、これは主に乳児の先天性涙鼻管閉塞に対して行われる。大人の涙道閉塞の治療としては、涙道内視鏡下涙管チューブ挿入法があり、直径0.9mmの内視鏡を涙道に入れ、モニターで観察しながら閉塞部を開放した後、細いチューブを涙道に挿入する。この手術は、局所麻酔で通院治療が可能。初回の治療成績は7割であるが、発症して日の浅いものほど治療効果が高い。難治の人に対しては、涙嚢鼻腔吻合術という涙嚢と鼻腔を直接つなぐ手術もある。これは入院の上、全身麻酔で行う必要があるが、治療成績は9割で再発は少ない。

流涙症は視力には影響がなくてもぼやけて見えたり、ものが見にくかったり、見え方の質が落ちる。流涙症が視力の質に影響していることを考えると、たかが涙と思わず、異常があれば眼科を受診することをお勧めする。