2012年「目の健康講座」

平成24年度 目の愛護デー行事「目の健康講座」が、9月30日(日)にふれあい健康館ホールにおいて行われました。

1 講演会

  • 「ドライアイと流涙症」 徳島大学眼科 助教 宮本 龍郎 先生
  • アイバンク紹介「最近の角膜移植術」 徳島大学眼科 講師 江口 洋 先生
  • 「新しくなった!緑内障の診断、治療基準」 徳島県眼科医会 理事 三河 洋一 先生

2 抽選会

3 目の健康相談会

相談医師

  • 兼松 誠二 先生(兼松眼科)
  • 谷 いずみ 先生(谷医院眼科)
  • 埜村 裕也 先生(藤田眼科)

今年から会場を沖浜のふれあい健康館ホールに変えて行いました。 あいにくの台風にもかかわらず約80人もの県民の方々が聴講しました。

宮本先生にはドライアイと流涙症について講演していただきました。 最近はコンピューターを使う仕事が増えたためドライアイの患者数も増えたとのことでした。 涙の構造、涙道の構造、涙の役割、涙液の検査などの解説と最新の点眼薬や涙点プラグ、涙管チューブ留置術などの手術療法について講演していただきました。

江口先生には最近の角膜移植術と題して講演していただきました。 近年眼球提供登録者数が減ってきているとのことで、献眼の大切さを訴えました。
徳島県では最新技術の角膜移植術が受けられ、待機期間もほとんどないとのことでした。

三河先生には失明原因の1位である緑内障について講演していただきました。最新の検査機器や治療薬、手術法について解説していただきました。緑内障は自覚症状に乏しく、進行性の疾患であるため生涯に渡り治療や管理が必要であると訴えました。

目の健康相談会には24人が相談をされました。

当日出務していただいた先生方はもとより、徳島新聞社のスタッフの皆様の多大な協力のもと盛大に終了いたしました。皆様どうもありがとうございました。

徳島県民の皆様、来年もぜひご参加下さい。

講演会

ドライアイと流涙症

徳島大学眼科 助教 宮本 龍郎 先生

 ドライアイも流涙症も涙と関係している。涙は涙腺から毎分1-2ul分泌され、10%は蒸発し、残りは涙点から涙嚢を経て鼻腔に至る。涙液検査には分泌量を調べるシルマー試験や涙液破壊時間の測定、角膜ならびに結膜上皮障害の測定がある。

ドライアイ患者数は最近推計2,200万人ともいわれている。ドライアイには分泌減少型と蒸発亢進型に分類されるが、VDT作業により瞬目回数が減少する蒸発亢進型ドライアイ患者が特に増加している。治療には点眼や装具などが挙げられるが、最近ムチン分泌を促進するドライアイ点眼液が開発され注目されている。

流涙症は分泌性流涙と導涙性流涙にわけられる。分泌性流涙は様々な眼疾患が原因となるが、主なものには加齢性眼瞼内反症があり眼瞼内反症手術が有効である。導涙性流涙は鼻涙管閉塞が挙げられ、涙管チューブ留置術や涙嚢鼻腔吻合術がなされる。最近皮膚切開を必要としない鼻内視鏡を用いた涙嚢鼻腔吻合術(鼻内法)が脚光を浴びている。

ドライアイや流涙症双方とも新しい治療法が導入されてきており、発症原因を特定し、その原因に基づいた治療が可能となってきた。

新しくなった!緑内障の診断、治療基準

徳島県眼科医会 理事 三河 洋一 先生

日本の失明原因の第一である緑内障は眼圧と視神経強度のバランスが崩れることが原因で発生し進行性に視野が狭くなる疾患である。障害された神経は元に戻せないため、早期発見早期治療が必要である。

緑内障で重要なものは眼圧である。眼内は角膜や水晶体等の血管の無い組織を栄養するため循環している房水の産生と流出の圧力差によって眼内の形状や眼球の硬さ(眼圧)が保たれている。

緑内障は、房水の出口(隅角)の目詰まりで房水が出にくくなる、「開放隅角緑内障」や房水の出口が狭くなる、「閉塞隅角緑内障」(慢性型と急性型がある)等がある。しかし、日本人の緑内障は正常範囲にもかかわらず緑内障になる「正常眼圧緑内障」が多い事も分かっている。

診断機器や治療材料の進歩で日本の緑内障診療ガイドラインも今年3回目の改訂が行われ、病態の細分化と共に、新しい治療薬や治療法が追記された。

緑内障は眼圧、眼底、視野等を検査して診断するが、最新のガイドラインではOCT(眼底三次元画像解析装置)による神経の詳細な解析で、視野欠損以前緑内障診断を行えるようになってきた。

治療方針も改訂され、閉塞隅角緑内障は超音波検査の進歩等から病態をより詳細に把握できる様になり、従来治療に加えて白内障手術が加わった。

開放隅角緑内障も新薬の追加や、難症例の新しい手術療法が追加された。

治療は症例ごとの眼圧をコントロールである。

治療薬も多くなったが、治療薬には何らかの副作用や特性が有り、それらに注意しつつ効果を上げるため、点眼回数や順番等を守る必要がある。

今回、複数の薬剤が混合された合剤が追加され、点眼回数や点眼本数の減少で利便性が向上したが、混合されている薬剤を合わせた副作用を把握する必要が出てきた。

薬物治療で不十分な場合、レーザー治療、線維柱帯切開術、線維柱帯切除術等が行われてきた。これらの手術でも奏功しない難治例や出血が問題となる場合に対して、今回の改訂で使用できる機材(チューブシャントやミニチューブ)が増えた。

十分な治療が出来た場合、約8割の人が進行を止めることができ、残り2割の人も進行を遅らせることはできる事が分かっている。新しい診断技術や薬剤、治療法により従来から治療の幅も広がりつつある。

今回の改定では「アドヒアランス」という患者さんもしっかり病状を理解し治療に参画していく重要性も明記されており、末期まで自覚症状が少ない緑内障に対して多方面から病状進行を抑制する必要性が述べられている。

 *掲載した写真は、徳島新聞社 様 より提供していただきました。