平成21年度 目の愛護デー行事「目の健康教室」が、10月4日(日)徳島県医師会館において行われました。
1 講演会
- 「わかりやすい緑内障」 徳島大学眼科助教 井上 昌幸先生
- 「糖尿病の眼合併症」 徳島県眼科医会会長 山根 伸太先生
2 徳島アイバンク提供のビデオ上映
3 ラッキー抽選会
4 目の健康相談会
相談医師
- 大串 淳子先生(おおぐし医院)
- 中屋 由美子先生(中屋眼科)
- 林 英憲先生(林眼科)
- 領家 由信先生(領家内科眼科)
今年の演題は一般によく知られた病気なので、当日の参加者は約200人と、ほぼ満席の状況でした。
井上先生には「わかりやすい緑内障」と題して講演していただきました。日本人の失明原因1位である病気なので皆さん興味深く聞き入っていました。特に日本人では眼圧が正常でも緑内障になる正常眼圧緑内障が多く、初期には自覚症状がなく見過ごされやすいので、眼科検診の重要性を訴えておりました。
山根先生には「糖尿病の眼合併症」について講演していただきました。眼合併症の中でも特に糖尿病網膜症は、日本人の失明の最大の原因のひとつでもあるので、早期発見、早期治療が大切だとのことでした。
目の悩みに答えてもらえる、無料「目の健康相談会」には、40人が参加し好評でした。当日出務していただいた先生方はもとより、徳島新聞社のスタッフの皆様の多大な協力の下盛大に終了することができました。皆様どうもありがとうございました。徳島県民の皆様、来年も是非ご参加下さい。
2009年10月11日 徳島新聞 特集20面
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講演会
「わかりやすい緑内障」
徳島大学助教 井上 昌幸 先生
緑内障は、40歳以上の17人に1人が有している一般的な病気です。眼圧が高くなって神経が弱っていき視野障害をきたすという機序で病気が進行していきます。
眼圧とは目の中に溜まっている水の圧力のことで、10~21 mmHgが正常範囲とされています。眼圧が高いと目の奥の神経に負担がかかります。ここは視神経乳頭といって目の神経が集まり脳へ信号を送る神経の束の入り口です。視神経乳頭が圧迫されて弱ってくると、見える景色の情報が脳へ伝わらずに、症状として視野障害が出てきます。
最近の調査によって、眼圧が正常でも緑内障を発症している方が緑内障患者全体の3分の2に及ぶことが分かりました。
視野障害は、神経の弱っている程度により進行していきますので、発症初期には自覚することが少ないです。ものを見る中心部は最後まで保たれることと、両眼で見にくいところを補い合って見ていることにより、発症初期には視野障害を自覚することが少ないです。
病気が進行してくると生活に支障をきたし始めますが、この時点では、すでに高度の視野障害をきたしていることが少なくありません。
緑内障は、神経の弱るスピードを抑えて、生涯にわたり神経の体力を持続させる治療を目指します。そのために、早期に発見され、早期に治療が開始できれば、失明に至ることなく生涯にわたり神経を保ちやすくなります。
逆に進行してから見つかった緑内障では、治療に難渋することも少なくなく、残念ながら失明にいたることもあります。
早期発見・早期治療により、生涯にわたって見える実力を保つことが大切です。
「糖尿病の眼合併症」
徳島県眼科医会会長 山根 伸太 先生
糖尿病は高血糖のために血管を犯して行くために全身に合併症を起こす病気で、 糖尿病腎症、糖尿病神経症、[1]糖尿病網膜症が糖尿病の3大合併症です。
糖尿病の眼合併症として糖尿病網膜症は良く知られていますが、網膜症以外に [2]白内障 [3]屈折・調節変動 [4]外眼筋麻痺 [5]ぶどう膜炎 [6]緑内障 [7]視神経障害 [8]電気生理学的異常・・・などが挙げられます。
[1] 糖尿病網膜症はフイルムの役目をする網膜に出血、白斑などの変化と共に網膜血管の閉塞により、 網膜機能の低下、網膜剥離などによって失明に至る病気です。2005年まで約20年間中途失明の原因のトップでした。
[2] 白内障は糖尿病による代謝異常に続発して起こるもので、進行すれば手術が必要になります。
[3] 屈折・調節変動は血糖値の大きな変動によって引き起こされます。 特に治療開始直後に起こることがあり、注意が必要です。
[4] 外眼筋麻痺は複視を主訴に起こります。 糖尿病の罹病期間、コントロールの状態に関係なく起こり、 比較的予後良好で回復する症例も見られます。
[5] ぶどう膜炎は眼の中の炎症で、霧視・充血などの症状で起こります。 早期にステロイド治療を行えば比較的短期間に治癒します。
[6] 緑内障は新生血管緑内障と言う特殊な緑内障で、 一般的な緑内障治療は無効で、網膜光凝固術のみが有効な治療法ですが、失明に至症例も認められます。
[7] 視神経障害は突然に視神経周囲の血管網の閉塞により起こり、失明します。
[8] 電気生理学的異常は網膜機能の低下の指標として使えます。
この様な合併症は全身的な血糖コントロールの不良によって起こるものであり、眼科医と内科医が良く連携をすると共に、 糖尿病の患者さん自身が糖尿病という病気を十分理解した上で、定期健診・治療を行うことが大切です。